2025/04/25
「教育の現在地と、塾だからできること」
――EDIX教育総合展に参加して考えたこと
東京ビッグサイトで開催されたEDIX(教育総合展)に参加してきました。教育に関わる者として、最新の情報を得るためにいろいろなセミナーに参加していますが、このように大規模なイベントは大変貴重です。会場に一歩足を踏み入れた瞬間から、全国の教育現場を支えるさまざまな技術、考え方、人の熱量に圧倒され、胸が高鳴るのを感じました。
まずは初日の目玉、元サッカー日本代表監督・岡田武史さんと2名の教育者によるトークセッション。会場の定員1000名を優に超える人数を目の前にして岡田さんの第一声、「今日は平日ですよね?教育関係者の皆さん暇なんですか?」というユニークなアイスブレイクから始まった3名のセッション。興味深いお話ばかりでとても1時間では終わらず、事務局のGOサインが出たようでアディショナルタイムが設けられました。内容は皆さんにも共有したいので後日載せますね。
次に参加したのは、Google for EducationによるGIGAスクール関連のセミナーです。全国の学校現場に1人1台の端末が導入され、いまや「ICT教育」は特別なことではなくなってきています。授業で使われるアプリ、AIによる学習履歴の分析、教師によるリアルタイムのフィードバック。そこには、「先生がすべてを教える」時代から、「子どもが自分で学ぶ」時代への大きな転換がはっきりと見て取れました。
各社のブースでは製品の展示はもちろん、30分前後のミニセミナーも開催されていたのでいくつか参加しました。そのうちの1つ、生成AIの活用と注意点のセミナーで、「生成AIは少しでも間違うと“それ見たことか。やはりコンピューターは使えない、信じられない。”という人がいるが、生成AIは副操縦士や秘書のようなものです。人間だって時に間違うことがあります。間違いを直してあげる、そしてさらに上手に活用していくことが大切です。」というお話が印象的でした。
※Microsoft主催のセミナーでしたので“副操縦士(copilot)”という表現を使われていました。
他にもデジタル教科書のデモンストレーション、学校の先生方が日々の業務を効率化するためのツールの紹介など、3日間では到底見きれないほどのコンテンツが並んでいました。
セミナーや展示の内容は、正直なところ「学校教育」や「教育委員会」の関係者向けが多く、塾関係者としては一歩引いた立場で聞くこともありましたが、それでも得るものは非常に大きかったと感じています。
なぜなら、子どもたちは日々学校に通い、学校での経験がそのまま塾での学習にも影響するからです。学校でどんなツールを使って学んでいるのか、教師がどんな視点で子どもたちに接しているのか、それを知らずして「学びのサポート」はできません。私たち塾の立場が学校とは違うからこそ、その橋渡しや補完ができるはずです。そのためには、まず「学校で何が起きているか」を知っておくことが不可欠だと考えています。
また、生成AIのセミナーでは、実際にAIを使って学習の提案や問題の作成を行うデモが行われました。AIは驚くほど精度の高いフィードバックを瞬時に返し、まさに「コンピューターが教える時代」を肌で感じる瞬間でもありました。けれど、そこでふと立ち止まる自分がいました。
――では、塾はこれから何をするべきなのだろう?
――私が、子どもたちにしてあげられることとは何だろう?
AIが教えてくれるのは「知識」「解法」「アイデア」です。それはたしかに大事なものですが、それだけで子どもたちの学びが完結するわけではありません。子どもたちは日々変化し、揺れ動く存在です。調子が良い日もあれば、何かに戸惑っている日もあります。そんなときに、「いつもの先生」が「今日のあなた」に寄り添ってくれること、言葉にならない気持ちを読み取り、励まし、支えること。そうした“人の力”は、どんなAIにも真似できないのではないかと思います。
教育はこれからますます多様化し、技術化していくでしょう。しかし、だからこそ「人だからできること」がいっそう問われる時代でもあります。私は塾という場所を通じて、子どもたち一人ひとりの可能性に向き合い続けたいです。コンピューターが勉強を教える時代にあっても、人が学びを支えていくことはこれからも変わらず必要だと信じています。
これからも学び続けます。子どもたちの心に寄り添い、子どもたちの未来に少しでも明るい光を届けられるように。