2025/07/31
〜身近な疑問から始める“探究”のすすめ〜
「なんでお湯のほうが水より早く凍るの?」
先週のコラムでご紹介したこの問いに、実はたくさんの反響がありました。身近な体験からふと疑問が湧き、それが自由研究へとつながっていく―そのようなプロセスこそ、まさに探究の第一歩です。
今回はそのPART2として、「なんで?」から始まる自由研究のヒントをご紹介します。テーマがまだ決まっていないお子さんにもおすすめの内容です。
「なんで?」と感じたときがチャンス!
自由研究というと、なにか特別なテーマや大がかりな実験をしなければならないようなイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、探究の出発点はもっとずっとシンプルです。
たとえば、このようなことを疑問に思ったことはありませんか?
•なんで炭酸飲料はフタを開けるとシュワシュワ音がするの?
•なんで金属のスプーンは口に入れると冷たく感じるの?
•なんで雨が降ると道路がにおうの?
•なんでカップ焼きそばのお湯は捨てるの?
•なんでスイカに塩をかけると甘くなるの?
こうした「身近な不思議」は日常の中にたくさん埋まっています。大人にとっては当たり前に感じることでも、子どもにとっては「まだ知らない世界」であることもあります。それを一緒に考えてみることで探究の芽がぐんぐん伸びていきます。
「予想」「比較」「観察」だけで立派な研究になる
自由研究というと、「実験しなきゃ」「まとめなきゃ」と思いがちですが、観察や比較だけでも十分に価値があります。
たとえばこのような感じです。
「氷はどこで一番早くとける?」
→ 冷蔵庫の中/日なた/日かげ/扇風機の前など、いくつかの条件で同じ大きさの氷を置いてみて、どれが一番早くとけるかを比べてみましょう。
「植物はどんな音楽が好き?」
→ 同じ植物を3つ育て、それぞれにクラシック、ロック、お経を聞かせた場合の成長を比べてみましょう。
「どんな素材の靴下が早く乾く?」
→綿、ポリエステル、ウールなど、素材の異なる靴下を同じ条件(日なたや室内など)で干して、どれが何分で乾くかを比べてみましょう。天気や湿度にも左右されるので、2日以上やってみるとさらに信頼性UP!
これらはどれも、身近なものでできる「問い」の立て方と観察の例です。
大切なのは「なんとなくやってみる」のではなく、「こうなるかも?」と予想を立ててから調べることです。予想が当たったら嬉しいですし、外れたらまた「なんで?」が生まれますね。
大人は“問い”を広げる伴走者に
自由研究のサポートをしていると、つい大人が答えを教えたくなる場面があります。「なんで?」と聞かれたら、「それはね、こういう理由でね…」と説明したくなる気持ちをぐっとこらえて、このように返してみてください。
•「確かに、不思議だね。なんでだろう?」
•「○○だったからかな?他の条件でも試してみる?」
•「どうやったら調べられるかな?」
自分で考えて経験したことは、必ず子どもの記憶に残ります。正解にたどり着くことも大切ですが、「問いを立てて、自分で試してみる」ことが何よりも大きな学びになることでしょう。
「失敗」も「寄り道」も全部OK!
自由研究は、うまくまとめられなかったり、予定通りに実験が進まなかったりすることも多々あります。
・結果が出なかった
・思った通りにいかなかった
・途中でテーマが変わった
いいじゃないですか~!それらも大きな学びであり、そこから新たな発見や経験が得られることもあるでしょう。“失敗は成功の基”ですね。
研究を“作品”にしてみよう
研究結果をまとめるときに、レポート用紙に書くだけではなく作品として表現してみるのもおすすめです。
•模造紙に図解してみる
•スケッチブックに写真やイラスト付きでまとめる
•パワーポイントでスライドを作成する
これらを友人同士で発表したり、家族に向けてプレゼンテーションをしてみたりして研究結果を表現するのもいいですよ。自分の努力を見てもらうことで自信につながり、他の人の考えを聞くことでさらに学びが広がります。
今だからこそできる体験が、きっと未来につながっていくことでしょう。「なんで?」から始まる自由研究、皆さんもぜひ楽しんでみてくださいね。
おまけ
また数年前のお話になりますが、国立科学博物館の特別展「深海」に足を運んだことがあります。
水深200メートルより深いところを「深海」と呼び、そこにかかる水圧は、なんと1平方センチメートルあたり約670キログラム!つまり、親指の爪ほどの面積に、軽自動車1台分の重さがのしかかっている計算になります。
そのような過酷な環境にもかかわらず、深海には魚やクラゲ、貝やエビなど、さまざまな生き物たちが生息しています。不思議ですよね。
地球表面の約7割は海で、その平均水深は約3800メートルです。つまり、海の大部分が「深海」なのです。
太陽の光も届かない、暗くて静かな深海。そのような広大な空間に、私たちのまだ知らない世界が今この瞬間も広がっているのだと思うと、なんだかワクワクしてきませんか?