前々回のコラムで、「逆算ができるようになった」というお話を書きました。
実際にその子は、数回の授業で変化を見せ、途中式を書きながら自分の力で答えにたどり着けるようになりました。
ところが、その次に手が止まったのは「分数」です。
分数になると、急に手が止まる。
そのような子は少なくありません。
中でも特に多いのが、「通分」でのつまずきです。
前回のコラムでは通分・約分の両方に触れましたが、実際には、最初に手が止まるのは通分であることがほとんどです。
分母を16にしてしまう子が多い理由
たとえば、
1/2 − 3/8 の計算。
このとき、本来であれば分母を8にそろえて、
4/8 − 3/8 = 1/8
とシンプルに解けます。
しかし、実際の現場では、分母を16にしてしまう子が意外と多くいます。
1/2 − 3/8 = 8/16 − 6/16 = 2/16
ここで計算を終えてしまい、約分をしないまま答えとしてしまうのです。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
「分母は両方変えるもの」という思い込み
まず一つは、
「通分するときは、両方の分母を変えなければいけない」という思い込みです。
そのため、計算式にもともとある「8」も、わざわざ別の数に変えてしまいます。
これは、「やり方」を形で覚えてしまっている典型的なパターンです。
最小公倍数の理解があいまい
もう一つは、
最小公倍数の理解が不十分なケースです。
8という共通の倍数(公倍数)に気づかず、「とりあえず分母同士をかけて通分すればいい」と考えてしまうため、16のような数を選んでしまいます。
この場合、計算自体は進められても、約分まで意識が回らないことが多く、結果として不正確な答えになります。
本当の原因は「分数」ではない
こうした間違いをする子に共通しているのは、「分数が苦手」というよりも、その前の理解がつながっていないことです。
たとえば、
- 数の倍数・約数の理解
- 計算の意味を考える習慣
- 問題文や計算式を丁寧に読む力
こうした基礎があいまいなまま進んでしまうと、分数の段階で一気に表面化します。
さらに、こうしたつまずきの背景には、「正しいやり方を選ぶ」という視点が育っていないこともあります。
通分は、単に分母をそろえればいい作業ではありません。
できるだけ小さい数、つまり、最小公倍数でそろえること。
それによって、計算ミスを減らし、考える負担を軽くすることができます。
しかし、「とにかく分母を同じ数にする」という理解だけで進んでいると、この判断ができません。
たとえば、1/4 と 1/6 の計算でも、本来であれば分母12で通分すれば十分です。
それにもかかわらず、24や36といった必要以上に大きな数にそろえてしまう子もいます。
計算としては間違いではありませんが、分母が大きくなるほど計算は複雑になり、ミスも増えやすくなります。
こうした「遠回りな通分」は、理解が表面的になっているサインの一つです。
本来であれば、「分母は最小公倍数でそろえる」のが原則です。
通分は、適切な方法を判断して進める計算です。
この判断ができるかどうかで、その後の計算の正確さは大きく変わってきます。
2つの分数の通分はできても、3つになると手が止まってしまう子もいます。
2つずつ通分すればいい、あるいは分母3つの最小公倍数を見つければいい、という発想が出てこないのです。
これは応用力というより、「基礎の使い方」が定着していない状態と言えます。
では、どうすればいいのか?
やるべきことははっきりしています。
基礎の段階で、正しく理解すること。
そして、反復を積み重ねること。
以前は、小学校の低学年のうちに、読み・書き・計算を繰り返し練習する時間がしっかり確保されていました。九九も何度も練習し、わり算の筆算も時間をかけて定着させていました。
しかし現在は、学習内容が増えている一方で、基礎をじっくり固める時間は限られています。
その結果、「なんとなくできる」状態のまま次に進んでしまう子が増えています。
本来であれば、間違えたときにその場で修正し、もう一度やり直すことで理解は深まります。
この積み重ねが、後の学習を支える土台になります。
低学年のうちに差がつくポイント
特に大切なのは、反復演習に抵抗が少ない低学年のうちに基礎を固めることです。
学年が上がるにつれて、
- 間違えることへの羞恥心
- 反復演習への抵抗感
- 自信のなさ
こうした要素が少しずつ強くなっていきます。
だからこそ、初期の段階で、
「間違えてもいい」
「すぐにやり直せばいい」
という経験を積み重ねることが重要です。
傷が小さいうちに修正できれば、その後の学習は格段にスムーズになります。
こうした基礎づくりは、小学生の段階でどれだけ丁寧に取り組めるかが重要です。
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分数で止まる子に必要な視点
分数で手が止まる原因は、分数そのものではありません。
その前の理解が、どこまでつながっているか。
そこを見直すことが、何よりも大切です。
「できない」と感じている部分の一歩手前に、本当の原因があることが多いのです。
そしてもう一つ大切なのは、
「どこでつまずいているのか」に気づくことです。
そこに気づき、正しくつなぎ直すことができれば、子どもの学びは大きく変わっていきます。
つまずきは、必ず理由があります。
そして、その理由に気づけたとき、子どもは自分の力で進めるようになります。
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