「途中式を書こうね。」
授業で何度も言う言葉です。
ただ、“ノートをきれいに書きましょう”と言いたいわけではありません。
以前、「書くこと」の大切さについてのコラムを書きました。
今回はもう少し踏み込んだ話をします。
私は長年の経験から、「はやく」やろうとするあまり、雑に取り組んでしまう子は、成績アップのチャンスを逃していることが多いと感じています。
もちろん、字が上手かどうかの話ではありません。
大事なのは、“丁寧に、集中して取り組んでいるか”です。
「はやい=すごい」ではない
子どもたちの中には「早い・速い=すごい」と思っている子がいます。
「宿題を早く終わらせることがいいこと」
「速く解くのがすごいこと」
中でも、特にそう思われがちなのが計算です。
「筆算しようね。」
これも授業中に繰り返し言うことです。
そろばんで暗算の段を持っているような子なら別ですが、そうではないなら、ほとんどの場合、暗算より筆算のほうが速くて正確です。
それなのに、筆算を書かず、暗算にこだわる子は意外と多い。
筆算のほうが速いのに、時間をかけて暗算をする。
しかも、時間をかけたわりに間違える。
さらに、その間違えた過程が何も残っていない。
だから見直しもできず、もう一度筆算をすることになり、時間と手間を費やすことになります。
計算で一番大事なのは、速さではありません。
正確さです。
速さは、その次なのです。
ノートは“作品”ではなく“攻略本”
私はよく、「ノートは自分の攻略本だよ」と話します。
自分を助けるためのものです。
どこで間違えたのか。
なぜ間違えたのか。
どう考えたのか。
それが残っていなければ、復習もできません。
勉強が苦手な子ほど、答えだけが並んだ“きれいなノート”を作りがちです。
しかし、それではあとから見返しても、自分が何を考えていたのかわかりません。
逆に、成績が伸びる子は、「答えを導く過程」を残しています。
筆算も、途中式も、考えた過程も残す。
だから、間違えても修正できます。
また、そうやって「考えた過程」を残せる子は、問題に向き合う時間も長くなります。
結果として、集中力も高くなっていくのです。
「ノートの使い方」については、以前こちらのコラムでも詳しく書きました。
もしまだ読んでいない方は、ぜひあわせて読んでみてください。
“丁寧さの方向”を間違えてしまう子
私がもう一つ気になるのは、「丁寧さの方向」がズレている子です。
作図でもないのに定規を使って線を引く。
筆算するたびに定規で線を引く。
1マス1文字を守りすぎる一方で、分数だけは1マスに分母と分子を窮屈に押し込めて書く。
そういう子は、丁寧にやろうとしていること自体は確かです。
しかし、“見た目”に意識が向きすぎていることがあります。
もちろん、丁寧に書こうとすること自体は悪いことではありません。
ただ、大事なのは「何に集中しているか」です。
定規できれいに線を引くことに集中しすぎて、肝心の計算ミスが増えてしまっては意味がありません。
本来、丁寧さとは、「自分がミスをしないための丁寧さ」であるべきです。
位をそろえて書く。
分数を大きく書く。
見直ししやすいようにスペースを空けて書く。
大事なのは、「同じ間違いを繰り返さない」ために、自分が読み返せる形で残すことです。
そして、勉強の内容そのものに集中することです。
分数でミスが多いなら、分母も分子も1マスずつ使って大きく書けばいい。
しかし、なかなか変えられない。
今までのやり方で困っているのに、やり方を修正できない。
これは、勉強において大きな壁になることがあります。
逆に、伸びる子は柔軟です。
「まず言われた通りにやってみる」ができる。
もちろん、自分なりのやり方を持つことは大切です。
ただ、そのやり方で結果が出ていないなら、一度方法を変えてみる必要があります。
スポーツでも、フォームやトレーニング方法を修正した瞬間に伸びる選手がいます。
勉強も同じです。
“読みやすい字”を書くことの大切さ
また、字の丁寧さも成績と無関係ではありません。
「東大生だって読みにくい字を書く人はいる」という話をすると、「じゃあ字は関係ないんですね」と言われることがあります。
しかし、それは少し違います。
トップレベルの学力がある子は、自分で自分の困りごとを解決できます。
また、人に見せる必要がある場合でも、字の丁寧さより、内容で評価されることがあります。
ただ、多くの子にとっては、字の丁寧さは大事です。
特に中学生になると、提出物の比重がとても大きくなります。
そして、提出物や答案用紙を見るのは“人”です。
学校の先生です。
私は、字が読みにくい子によくこう話します。
「私はあなたが頑張っていることを知っている。字が上手・下手は関係ない。でも、答案用紙や提出物を見るのは私じゃない。学校の先生たちなんだよ。だから、誰が見ても読みやすい字を書こうと言っているんだよ。」
特に中学校は教科担当制です。
多くの先生が、その子の答案用紙や提出物を見ることになります。
※最近はAI採点やデジタル処理を導入する学校も増えていますが、それでも最終的に“人が読む”場面は多く残っています。
字が上手である必要はありません。
しかし、“読みやすい字”を書くことは大切です。
“体育カード”が教えてくれること
近隣の中学校には、「体育カード」という提出物があります。
体育の授業内容について、ルールや注意点、考察や感想を書くレポートです。
実技では活躍している生徒でも、この体育カードを丁寧に書けず、成績「5」を逃すことがあります。
逆に、実技はトップレベルではなくても、体育カードを丁寧に書き、内容もしっかり仕上げる生徒が高評価を取ることもあります。
成績(内申)は、テストの点数だけで決まるわけではありません。
だからこそ私は、「丁寧に取り組む」ということを大事にしています。
勉強は、“自分を助ける形”で積み重ねるもの
勉強は、“とにかく速く・早く”やるものではありません。
正確に、丁寧に、集中して積み重ねていくものです。
途中式を書くことも。
筆算を残すことも。
読みやすい字を書くことも。
それが全部、「自分の成長を助ける」ことになります。
そして、その積み重ねが、最終的には成績の差になっていくのだと思います。
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