~変わる私学を見て~
近年、私学ではさまざまな変化が続いています。
女子校・男子校だった学校が共学化したり、大学との提携を進めたり、新しいコースを設置したり。
私が塾業界に入った頃と比べても、私学を取り巻く環境は大きく変わりました。
少子化が進み、生徒や保護者のニーズも多様化する中で、各学校がそれぞれの特色を打ち出そうとしています。
私たちは普段、受験生や保護者の立場から学校を見ています。
しかし学校側もまた、これからの時代に何を残し、何を変えていくのかという選択を迫られているように感じます。
先日、横浜女学院の塾向け説明会に参加してきました。
来年度から始まるサイエンスコースや、立教大学との提携についてお話を伺う機会がありましたが、私が特に印象に残ったのは理事長先生のお話でした。
「どの大学に進学したかは大切かもしれない。しかし、70歳、80歳になって人生を振り返ったときに、『これまで何をしてきたのか』『何を考えて生きてきたのか』のほうが大切なのではないか。」
そして、その価値観を育てる大切な期間が中高の6年間であり、女子だけの環境だからこそ経験できることがある、というお話でした。
学校説明会というと、入試制度や進学実績に注目しがちです。
しかし今回は、それ以上に学校が何を大切にしているのかを考えさせられる時間になりました。
そしてそれは、横浜女学院だけではなく、変化の時代を迎えている私学全体にも通じる話のように感じました。
男女別学の学校が大切にしているもの
理事長先生のお話を聞きながら、私自身の高校時代を思い出しました。
私は女子校出身で、入学式当日、全校生徒で校歌を歌ったときの「女子の声しかしない」という初めての感覚を今でも覚えています。
あのとき、これからの3年間は女子だけの世界で過ごすのだと実感しました。
生徒会長も女子。
部活動の部長も女子。
文化祭や体育祭のリーダーも女子。
準備も片付けも全部女子。
理系クラスも全員女子。
学校生活のあらゆる場面を女子だけで作り上げていく環境は、今振り返ると女子校ならではの経験だったように思います。
理事長先生がおっしゃっていた「女子だけの中高6年間でしか経験できないこと」とは、こうしたことなのかもしれません。
そして、それは女子校に限らず、男子校も同じだと思います。
何をするにも、どんな役割も、全部男子。
男女別学には、共学校とは異なる文化や雰囲気があります。
そうした価値がそこにあるからこそ、今も男女別学を続けている学校があるのかもしれません。
変わるために、残す
横浜女学院の理事長先生は、
「何を残していくべきなのか」
という言葉を繰り返し話されていました。
そして、
「残すための立教大学との提携であり、サイエンスコースの新設である」
とも。
近年、多くの女子校が共学化する中で、横浜女学院は女子校としての教育を続ける道を選びました。
立教大学との提携といっても、附属校になるわけではありません。
学校として大切にしてきたものを残しながら、新しい価値を加えていく。そのための取り組みが、立教大学との提携であり、サイエンスコースの新設なのだと感じました。
説明会の中では、理科や探究活動を通して「なぜ?」を考える力を育てたいというお話もありました。
時代に合わせて教育内容は変わります。しかし、その根底にある理念は変えない。
そんな姿勢が伝わってきました。
学校によって選ぶ未来は違う
横浜女学院の説明会の前の週に、聖ヨゼフ学園が開智学園グループに加わるという発表がありました。
学校の再編や大学との提携は、水面下で何年も前から話題になることが少なくありません。しかし今回の発表は非常に急で、塾業界でもほとんど話題になっていなかった印象があります。
聖ヨゼフ学園は長年にわたりカトリック教育を大切にしてきた学校です。
だからこそ、この決断にはさまざまな思いがあったのではないかと想像します。
一方で、開智学園グループは探究学習や国際教育で近年大きな注目を集めています。
どちらが正しいという話ではありません。
横浜女学院も聖ヨゼフ学園も、それぞれの立場で学校の未来を考えた結果なのでしょう。
残したいものも、選ぶ方法も、学校によって異なります。
学校説明会で見えるもの
塾向けの説明会に参加すると、入試制度や進学実績だけではなく、その学校がどのような考えで教育を行っているのかに触れることがあります。
パンフレットには載っていない話や、数字だけでは伝わらない学校の雰囲気を感じることもあります。
今回の説明会でも、進学実績として掲載されている卒業生のお話も紹介されました。
「どの生徒にも、それぞれの努力とエピソードがあるのですが。」
そう前置きをされたうえで、一人の卒業生のお話をしてくださいました。
ある国公立大学を志望していたその生徒さんは、前期日程では合格に届かなかったそうです。
それでも諦めることなく勉強を続け、卒業式後も努力を重ね、後期日程で合格を勝ち取りました。
近年は総合型選抜などで年内に進路を決める生徒も増えています。
そんな中で最後まで挑戦を続けた姿に、先生方も深く心を動かされたそうです。
私自身もそのお話を聞きながら感動するとともに、数字だけでは測れない価値を改めて感じました。
理事長先生が語られた「何をしてきたのか」「何を考えてきたのか」という言葉。
そして、広報の先生が紹介してくださった卒業生のエピソード。
どちらも、結果だけではなく、その過程にも価値があることを教えてくれているように思います。
大学名や合格者数は目に見える結果です。
しかし、その結果にたどり着くまでに何を考え、どのように努力したのか。
そうした部分に学校の教育が現れるのかもしれません。
おわりに
私は受験生の進学先が決まると、一人ひとりに手紙を書いています。
その中で、ほぼ全員に書いている言葉があります。
「たくさんの経験をしてください。」
勉強も、部活動も、学校行事も、人との出会いも。
中学・高校の6年間だからこそできる経験があります。
その経験の積み重ねが、その後の人生を支える財産になると私は思っています。
私が今回の説明会で印象に残ったのは、大学名でも合格者数でもありませんでした。
「何を残していくべきなのか」という理事長先生の言葉と、最後まで諦めずに挑戦を続けた卒業生の姿。
どちらも、その学校が大切にしているものを表しているように感じました。
私のもとから中高一貫校へ進学した生徒たちにも、それぞれの学校で充実した6年間を過ごしてほしいと思っています。
そして卒業するときに、「この学校を選んでよかった」と感じてもらえたら嬉しいです。
私たちは普段、学校を「選ぶ側」として学校を見ています。
しかし今回の説明会では、学校もまた「何を残し、何を変えるのか」を考えながら未来を選んでいることを感じました。
女子校としての教育を残したい横浜女学院。
新たなグループの一員として未来を選んだ聖ヨゼフ学園。
どの学校も変化の時代の中で、自分たちの存在意義を問い続けているのだと思います。
個別指導Paletteでは、こうした私学の傾向に合わせた受験対策を行っています。
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